つくしんぼ通信令和5年11月号

いろいろな薬が足りなくなっています

ジェネリック医薬品については、水虫の薬に睡眠薬を混入させ交通事故などを引き起こす結果となった小林化工の問題や、最大手の沢井製薬でも品質試験不正など次々と不正、不適切操業が明るみに出て、ほとんどのジェネリックメーカーが生産を縮小、あるいは操業停止の処分を受けました。そのため全国的に薬不足が深刻化しており、特に解熱剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎剤、感冒薬などは入手困難です。予防接種後の発熱に備えて解熱剤の購入を希望される方に薬をお渡しできるほどの在庫が当院にもありません。実際に副反応で発熱された方には対応させていただきます。

また、ジェネリック医薬品の使用に不安のある方は、医師へのお申し出により先発正規品を指定することも可能ですのでご相談ください。ただし、先発品は管理が厳密で品質が安定しているものの、お支払いが数割程度お高めになりますのでご承知おきください。

認知症の薬が承認「レカネマブ」

認知症の新規治療薬としてレカネマブが承認されました。これはアミロイドβという異常なタンパクが蓄積して起こるアルツハイマー型認知症において、原因物質とされるアミロイドβの蓄積を阻害する薬です。従ってアミロイドβが蓄積するアルツハイマー型認知症(認知症の約半分)のみに効果を認めます。治療は蓄積が完了する前の早い段階(やっと症状に気付き始めた頃)から始めなければならないこと、治療に効果が期待できるか調べるためにアミロイドβが実際に存在するかを予め自費検査をしなければならないことなど、越えなければならないハードルがいくつもあります。また、一人当たり18ヶ月で1億5千万円といわれる治療費は日本の医療制度を崩壊させる危険性を帯びています。さらに完全に治癒するというものではないので、進行が遅れただけの中途半端な状態の人たちを増加させる結果になるかもしれません。特に日本の場合、尊厳ある生き方死に方を軽んじる傾向にあり、病院などのベッドで寝たきりでチューブで栄養を与えられながら、生き長らえる人々を増やすだけになる可能性もあります。(諸外国では自分で意思表示ができなくなった人をベッドに経管栄養などでつなぎとめることは「拘束行為」であり虐待と考えるようです。日本ではつい20年前まで嫌がる療養者をベッドに拘束帯で縛り付けて管理することが当たり前のように行われていましたが、現在は厳しく禁止されています。おそらく遠くない将来、日本でも無為な延命行為を戒めるようになるでしょうが、現状では延命をしないことは無慈悲な行為として認めない意見も多いようです)

興味のある方は医師にご相談ください。

鈩 裕和