つくしんぼ通信令和8年3月号

帯状疱疹大流行

帯状疱疹はこどものころ罹患した水疱瘡(水疱ウイルス)が自らの後根神経節の中で生き残り、免疫力の低下などに伴って再活性化することにより神経の走行に沿って赤い水疱疹と激しい痛みを生ずるものです。皮膚の病変は素直に消えてしまいますが場合によっては一生涯深い潰瘍を形成し延々と処置が必要になることもあります。痛みは通常3か月で消えるとされていますが多くの方が一生続く強い痛みやしびれで生涯を棒に振っています。水痘ウイルスに初めて感染されたときは「水疱瘡」、2回目以降は「帯状疱疹」としての症状を発現し約5%の方が複数回の帯状疱疹を経験します。

なぜ今帯状疱疹が流行するのか

帯状疱疹は基本的に自身が体の中に持っているウイルスが再活性化して症状が出るもので他人に移されて発症するものではありません。なのになぜ時を同じくして流行しているのでしょう。一番の大きな理由は2014年から始まった生後12か月から36か月の乳幼児への水疱瘡ワクチンの定期接種が原因しているようです。以前大人は水疱瘡の子供から繰り返し感染させられて免疫力を高めていたのに、ワクチンの接種によって水疱瘡の子供が減り、大人は免疫力を高める機会を失ってしまいました。免疫力が弱まると体内に生き続けていた水痘ウイルスは邪魔者がいなくなって元気よく再活性化してしまいます。そして帯状疱疹となるのです。生涯で1/3の人が帯状疱疹を発症すると言われていますが、今後この割合がさらに増え後遺症に悩む人々が増える可能性があります。

帯状疱疹ワクチン接種の公費補助

以上のような状況を踏まえて、高齢者への帯状疱疹ワクチン接種の公費補助制度が始まり2026年3月末まで半額で接種できることになっています。帯状疱疹のワクチンとして使用されているものには2種類があります。水疱ウイルスワクチンは1回接種の上4000円程でお得ですが高齢になるほど免疫が定着しません。帯状疱疹専用ワクチンは1回10000円(自費なら税込み22000円)する上に2回接種が必要です。しかし効果はけた違いで90歳の方でも9割を超える予防効果が期待できるそうです。60歳を越えると専用ワクチン接種がお得と思います。今のところワクチンの公費補助が4月以降継続されるのか中止されるのかは未知数ですが、仮に中止されるとワクチンの2回目は2か月の間隔を置いて接種することになっていますので、1回目を3月末までに打った時1回目のみ公費接種で2回目は自費接種(税込みの場合22000円程)になります。2回接種の専用ワクチンでも1回のみの接種では13%の効果とされておりますので2回目の接種はしておいた方が賢いと思われます。

治療薬はどうなのか

実際に帯状疱疹を発症してしまうとウイルスの増殖を抑えることによって、活動の場となる神経細胞の損傷を低減し痛みや皮膚病変の増悪を防ぐ目的の薬剤が使用されます。発症後72時間以内に内服を開始するのが効果的で7日間内服するのが原則ですが、初回1回投与の薬剤など様々なものが発売されています。効果や日々の服薬回数などまちまちですので主治医と相談してください。また痛みが大きな症状ですので鎮痛薬なども併用することになります。専用の鎮痛薬の商品名リリカ、タリージェなどが処方されます。皮膚の病変が著しい場合は軟膏などの処置が必要になります。治療薬は市販品にはありませんので薬局を探し回る前に早く診療所を訪れてください。

どこの科を受診すべきか

全身病ですので初めの窓口は内科でよろしいと思います。皮疹が目立つ症状なので皮膚科に駆け込む方が多いのですがそれでもかまいません。兎に角早く受診して早く治療を開始し後遺症を最小限に止めることです。

顔面の症状には特に注意

帯状疱疹は胸腹部の片側性の皮疹が多いのですが、顔面頭部の顔面神経領域や三叉神経領域に発症することもあります。こうした場合視覚や聴覚,平衡覚などに不快な後遺症を残すことがありますので早期治療開始が必要です。顔面の帯状疱疹は場合によって眼科や耳鼻科と協力して治療に当たります。

情報提供  鈩 裕和