つくしんぼ通信令和8年6月号

感染症検査の定番となったPCR検査ってなに
発熱や喉の痛みなどがあると実施される新型コロナ感染症のPCR検査って何でしょう
一般に家庭でもできる抗原検査とどう違うのでしょう

まず抗原検査ですがこれは唾液や鼻の奥をこすって得られた検体中に存在するウイルス本体を検出するもので、かなり高濃度にウイルスが存在する必要があります。従って感染していても検体の採取方法が稚拙であったり、採取する時期が不適切な場合、ウイルス量が少ないため反応が出ません。感染が見逃されてしまい感染の拡大につながります。家で行う抗原検査はたとえ陰性でも感染していないという保証はありません。

PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメレース連鎖反応)検査は検体中のウイルスが微量であっても検出できる方法です。まず検体を採取しますが、ここまでは抗原検査と同じです。検体中にウイルスが極めて少ない場合、例えば一つしかない場合でもその細胞の遺伝子(DNAまたはRNAを逆転写したDNA)を94℃程度に温めDNAの2重らせんをほどき、50℃近くに冷やし試薬中の合成短鎖DNAと反応させDNAを倍増させ、更に加熱と冷却を繰り返していきます。加温と冷やしを20回繰り返しでDNAは100万以上、50回繰り返すと1000兆以上に増幅され検出率が格段に向上します。一般的に臨床の現場でPCR検査と言われて実施されているのは研究室レベルのような超高精度PCRではありませんが、臨床的に必要と考えられる検出精度を確保できる程度で、さらに15分程の短時間で検査が終了できる条件で増幅する簡易検査です。簡易と言ってもその増幅力は恐るべしで抗原検査の比ではありません。

現在は新型コロナの検査に主に使用されていますが、試薬中の合成DNAをインフルエンザやその他の感染症に置き換えれば応用範囲はいくらでも広がります。ただ、今のところ、この試薬の価格が高過ぎて弱小診療所では手が届きません。

しかし、今後新たな感染症が日本でパンデミックを起こすようなことになれば国策として試薬の提供が受けられるようになるかもしれませんが、そうならないことを願うばかりです。

ちなみにアフリカのコンゴで猛威を振るっているエボラ出血熱のPCR検査資材は日本には備蓄がないそうです。日本では生活様式や医療レベルなどからエボラ出血熱の流行はまずないと思われます。新型コロナと異なり患者の体液に触れたりしなければ感染は成立しないので、危険なのは家族や医療者に限られると考えられます。内戦が絶えない国情と、遺体崇拝などが現地の感染拡大の要因のようです。

つくしんぼ診療所 鈩 裕和